「チラシを配ったけれど、そこから電話が何件きたのかがわからない」。店舗を運営していると、こうしたもどかしさに何度もぶつかります。
その悩みを解決する仕組みが、媒体ごとに別の番号を用意して着信を数える「計測用の転送電話番号」です。かかってきた電話はそのまま店舗の本来の番号に転送されるため、お客様の手間は増えません。
ところが、この便利な番号をGoogleビジネスプロフィールにそのまま登録してしまうと、思わぬ副作用が出ることがあります。店舗情報の土台であるNAP(店名・住所・電話番号)の一貫性が崩れ、Googleがあなたのお店を正しく認識できなくなる可能性があるからです。
この記事では、転送番号の仕組みからNAPが崩れるメカニズム、Googleの公式ガイドラインの実際の記述、そして安全に運用するための設計とチェックリストまでを順番に整理します。専門用語はできるだけかみ砕いて説明しますので、電話まわりの設定に詳しくない方も安心して読み進めてください。
計測用の転送電話番号とは?店舗が使いたくなる理由

転送電話番号の基本的な仕組み
計測用の転送電話番号とは、広告や媒体ごとに割り当てる「入口専用の電話番号」のことです。お客様がその番号にかけると、システムが自動的に店舗の実際の電話へつなぎ、同時に「いつ・どの番号に・何件かかってきたか」を記録します。
お客様から見れば、普通に電話をかけてお店につながるだけなので、違和感はほとんどありません。一方でお店側は、番号ごとの着信件数を見るだけで、どの媒体が電話を生んでいるのかを把握できます。
この仕組みは一般に「コールトラッキング」と呼ばれ、国内でも複数の事業者がサービスを提供しています。割り当てられる番号は、0120や0800で始まるフリーダイヤル、050から始まるIP電話番号、市外局番付きの固定電話番号など、サービスによってさまざまです。
録音機能や着信時間の記録、担当者ごとの応対履歴まで残せるものもあり、電話が主要な問い合わせ経路になっている業種ほど効果を感じやすい仕組みだといえます。
店舗が「番号を分けたい」と考える3つの場面
番号を分けたいという要望が出てくる場面は、だいたい次の3つに集約されます。ひとつ目は、チラシ・折込・看板・タウン誌といったオフラインの販促で、どれが効いたのかを知りたいときです。
ふたつ目は、リスティング広告やポータルサイトなど、費用のかかるWeb媒体の費用対効果を確かめたいとき。3つ目が、Googleビジネスプロフィールの通話ボタンから何件かかってきたのかを知りたいときです。
このうち1と2は、番号を分けても大きな問題は起きません。注意が必要なのは3つ目、つまりGoogleビジネスプロフィールに登録する番号そのものを差し替えるケースです。
ここを混同したまま「とりあえず全部の媒体に計測番号を入れよう」と進めてしまうと、集客の土台を自分で崩してしまうことになりかねません。
何が測れて、何が測れないのか
転送番号で測れるのは、あくまで「その番号に何件の着信があったか」です。誰が予約に至ったのか、実際に来店したのか、いくら使ってくれたのかまでは、電話の記録だけではわかりません。
また、番号を見ずに店名で検索し直してから電話をかける人もいますし、そもそも電話ではなくWebフォームや予約サイトを使う人もいます。つまり転送番号の着信数は、その媒体が生んだ反応の一部を切り取ったものにすぎません。
この前提を理解しておくと、「計測のために店舗情報の一貫性を犠牲にするのは割に合わない」という判断がしやすくなります。得られる情報の価値と、失うかもしれないものを、冷静に天秤にかけて考えてみてください。
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転送番号を使うとNAPが崩れる仕組み

NAPの「P」が揺らぐと、Googleは何を見失うのか
NAPとは、Name(店名)・Address(住所)・Phone(電話番号)の頭文字を取った略語で、ローカルSEOの実務で広く使われている言い方です(Googleの公式用語ではありません)。ローカル検索における店舗情報の基本3要素にあたります。
Googleは、Web上のさまざまな場所に散らばっているこの3点セットを突き合わせて、「これは同じお店の情報だ」と判断しています。
自社サイト、Googleビジネスプロフィール、ポータルサイト、業界団体の名簿、地図アプリ。これらに載っている店名・住所・電話番号が一致しているほど、Googleは情報の確からしさを高く見積もります。
ところが電話番号だけを別のものに差し替えると、この突き合わせが一部で成立しなくなります。同じ店なのに別の店の情報として扱われかねない、というのが最も避けたい状態です。
もちろん、番号がひとつ違うだけで即座に順位が落ちるわけではありません。ただ、Googleが判断に迷う材料を自分から増やしているのは事実であり、長期的に見て得のある選択とはいいにくいところです。
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実際に起きるトラブルのパターン
現場でよく聞くのは、契約を解除した後のトラブルです。計測サービスの利用をやめると転送番号は使えなくなりますが、その番号がまだあちこちのサイトに残っていて、かけても誰にもつながらない状態になります。
この「つながらない番号」がGoogleビジネスプロフィールに残っていると、お客様は電話を諦めて別の店に流れます。しかも本人が気づきにくいため、数か月にわたって機会を失い続けることになります。
もうひとつは、Googleが外部の情報源から拾った古い番号で、プロフィールの内容を自動的に上書きしてしまうケースです。ポータルサイトなどに旧番号が残っていると、オーナーの意図と関係なく表示が入れ替わることがあります。
さらに、複数店舗を展開している会社が全店に共通のコールセンター番号を設定してしまい、店舗ごとの区別がつかなくなるという例もあります。どの店の情報なのかが曖昧になれば、地図検索での見つけられやすさにも影響します。
「一度だけ試した番号」が何年も残ることがある
見落とされがちなのが、情報の残存です。ある時期に使った番号は、キャッシュや第三者のまとめサイト、口コミサイトの店舗ページなどに転記され、想像以上に長く生き続けます。
自社で管理しているサイトなら修正できますが、勝手に情報を掲載しているサイトまでは手が届きません。試しに使っただけの番号が、数年後に「連絡先が2つある店」として残ってしまう可能性があるわけです。
だからこそ、電話番号を変える判断は、住所を変えるのと同じくらい慎重に扱うべきものだと考えてください。一度広まった情報を回収するコストは、想像よりずっと大きいものです。
Googleのガイドラインはどこまで認めているのか

公式ガイドラインの原文で確認する
憶測で判断せず、まずはGoogleの公式文書を読むのがいちばん確実です。ビジネス プロフィール ヘルプの「Google に掲載するビジネス情報のガイドライン」には、電話番号について次のような趣旨が明記されています。
- 個々のビジネス拠点に直接つながる電話番号を指定すること
- 可能であれば、電話総合受付センターではなく、個々のビジネス拠点の番号を使用すること
- 実際のビジネス拠点とは異なる場所、または実際のビジネスのウェブサイトとは異なるランディングページにユーザーをリダイレクトする(送る)ための電話番号やURLは指定できないこと
- ビジネス直属の電話番号を指定すること
- 発信者に請求される料金に関係なく、追加料金のかかる電話番号は使用できないこと
ポイントは、「その番号でお店に直接つながるか」という一点に集約されている点です。番号の種類そのものを禁じているのではなく、電話をかけた人が確実にその店舗につながる状態かどうかが問われています。
逆にいえば、複数の店舗や事業者を束ねる受付センターに飛ばすような使い方は、ガイドラインの意図から外れます。ここが判断の分かれ目になります。
「追加の電話番号」はメイン+2件まで
Googleビジネスプロフィールでは、メインの電話番号のほかに最大2件の電話番号を追加できます。携帯電話番号でも固定電話番号でも構いませんが、FAX番号は追加できません。
これはGoogleのヘルプページ「電話番号の追加」に明記されている仕様で、番号を複数持つこと自体はもともと想定された使い方です。ガイドラインにも、追加の電話番号を自社サイトなどで使ってよい旨の記述があります。
つまり、実在する店舗の番号をメインに据えたうえで、補助的な番号を追加欄に入れるという構成は、公式に認められた範囲に収まります。問題になるのは「メイン番号を計測用に置き換えること」であって、番号が複数あること自体ではありません。
なお、追加した番号もお客様の目に触れる可能性があります。誰も出られない番号を入れておくと、それはそれで機会損失につながるため、実際に応対できる番号だけを登録してください。
グレーゾーンの正体と、避けるべき使い方
海外のローカルSEO実務では、「転送先が自店の実番号で、自社が番号を管理しており、なおかつ本来の実番号を追加の電話番号欄に残しておくのであれば、計測用番号の利用は許容されうる」という見解が共有されています。実番号を残すことがセットになっている点が重要です。
ただしこれはGoogleが個別に「問題ない」と公式に保証した話ではなく、ガイドラインの解釈にもとづく実務上の目安です。この違いは押さえておいてください。
一方で、明確に避けるべき使い方もはっきりしています。複数の店舗からの電話を一括で受ける代理店のコールセンターにつなぐ番号、店舗が管理権限を持たない番号、通話料が上乗せされる有料番号などがこれにあたります。
こうした使い方は、ガイドラインの「実際のビジネス拠点とは異なる場所にリダイレクトする番号は指定できない」に正面から抵触します。プロフィールの停止という重い結果を招く可能性があるため、手を出さないのが賢明です。
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安全な設計:メイン番号は実番号のまま、計測はこう分ける

原則ルール:Googleビジネスプロフィールのメイン番号は変えない
迷ったときの原則はシンプルです。
Googleビジネスプロフィールのメイン電話番号には、看板・名刺・自社サイトに載せているのと同じ実番号を入れる。これを動かさないことが最優先です。
この番号は、Googleがあなたのお店を識別するための基準点になります。基準点が揺らげば、ほかの情報がいくら整っていても評価は安定しません。
計測したいという目的は、番号を差し替える以外の方法でも十分に達成できます。まずは「メイン番号は固定」と決めてしまい、そのうえで測り方を考えるという順番にしてください。
この順番を守るだけで、後々の手戻りやトラブルの大半は防げます。社内で共有するときも、この一文だけは全員が覚えておく価値があります。
どうしても転送番号を使いたい場合の条件
事情があってどうしても計測番号を使いたい場合は、次の条件をすべて満たしているかを確認してください。ひとつでも欠けるようなら、導入を見送るほうが安全です。
- 転送先が、その店舗の実際の電話に直接つながっていること
- 番号の契約・管理権限を、店舗(自社)自身が持っていること
- 同じ番号を複数の他社と共有していないこと
- 通話料が上乗せされる有料番号ではないこと
- 市外局番が店舗の所在エリアと一致していること(できるだけ)
- 解約時に番号をどう扱うか、あらかじめ決めてあること
そのうえで、Googleビジネスプロフィールでは実番号をメインに、計測番号は「追加の電話番号」欄に置くという構成をおすすめします。これならNAPの基準点は保たれたままです。
順序を逆にして計測番号をメインに据える運用も海外では見られますが、リスクを取る必然性は多くの店舗にはありません。守りを固めた構成から始めるのが現実的です。
電話以外で効果を測る方法を先に検討する
そもそも、電話番号を分けなくても媒体別の効果はかなりの精度で測れます。代表的なのが、リンクにパラメータを付けて流入元を識別するUTMの活用です。
Googleビジネスプロフィールに登録するウェブサイトURLにUTMパラメータを付けておけば、プロフィール経由でサイトに来た人の数や、その後の行動をGA4で追えます。番号をいじる必要はまったくありません。
また、Googleビジネスプロフィールのパフォーマンス画面には、通話ボタンが押された回数やルート検索の回数といった指標が用意されています。媒体別の内訳までは出ませんが、プロフィール全体の反応量は把握できます。
オフラインの販促については、番号ではなくクーポンコードや「チラシを見た」の一言、専用のランディングページなどで切り分ける方法もあります。目的が「効果を知ること」なら、選択肢は電話番号だけではありません。
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媒体ごとに番号を変えるなら「GBP以外」で
それでも番号ごとの着信数がほしい場面はあります。その場合は、計測番号を使う場所をGoogleビジネスプロフィール以外に限定してください。
たとえば折込チラシ、店頭ののぼり、車両のラッピング、紙のクーポン、有料広告のランディングページ。これらはGoogleがNAPの照合に使う主要な情報源ではないため、影響が比較的小さく済みます。
一方で、自社サイトの店舗情報ページ、Googleビジネスプロフィール、主要なポータルサイトの店舗ページの3か所には、必ず実番号を統一して掲載します。この3か所を「聖域」として守ると決めておくと、判断がぶれません。
社内で新しい販促を企画するたびに議論が起きるのを防ぐためにも、この線引きは文書にして共有しておくことをおすすめします。
導入前後のチェックリストと社内ルールの作り方

導入前に確認する5つの項目
計測番号の導入を検討する段階で、次の5点を書き出して整理してください。ここが曖昧なまま進めると、あとから必ず困ることになります。
- 目的の明確化:何を知りたくて番号を分けるのか、その情報で何を決めるのかを一文で書く
- 代替手段の検討:UTMやクーポンコードなど、番号を分けずに測る方法で足りないかを確認する
- 掲載場所の棚卸し:いま実番号がどのサイトに載っているかを一覧にする
- 契約条件の確認:番号の所有者は誰か、解約後に番号はどうなるかを契約書で確認する
- 撤退基準の設定:どうなったらやめるのかを、導入前に決めておく
特に3つ目の棚卸しは、あとで効いてきます。自店の番号がどこに載っているかを把握していない状態では、そもそもNAPの統一は不可能だからです。
店名で検索して上位に出てくるページを20件ほど開き、掲載されている番号を記録するだけでも、十分に実用的な一覧になります。
導入後に毎月見ておきたい項目
番号を運用し始めたら、月に一度は次の点を確認してください。手間はかかりませんが、放置すると気づかないうちに損失が積み上がります。
- Googleビジネスプロフィールのメイン番号が、実番号のままになっているか
- 計測番号にかけたとき、実際に店舗の電話が鳴るか(自分でかけて確認する)
- 主要なポータルサイトの店舗ページで、番号が書き換わっていないか
- Googleから「情報の更新提案」が届いていないか
- 着信件数が急に減っていないか(転送が止まっている可能性)
2つ目の「自分でかけてみる」は地味ですが、最も確実な確認方法です。転送設定は、サービス側の仕様変更や支払いの滞りで、静かに止まることがあります。
確認した結果は日付とともに記録しておくと、トラブルが起きたときに原因の切り分けが早くなります。担当者が交代しても引き継げる形にしておくと安心です。
番号を戻す・やめるときの手順
計測をやめる、あるいはサービスを解約するときは、順番が重要です。先に掲載を差し替えてから、最後に番号を解約するという流れを必ず守ってください。
番号を先に止めてしまうと、差し替えが終わるまでの間、つながらない番号が世の中に残ることになります。数日でも、その間の電話はすべて失われます。
具体的には、まず自社サイトとGoogleビジネスプロフィールを実番号に統一し、次に主要なポータルサイトを修正します。転送サービスの解約は、それらがすべて反映されたことを確認してから行います。
可能であれば、解約後も1〜2か月は番号を維持できるプランに切り替えて、旧番号にかかってきた電話を拾える状態にしておくと万全です。契約前にこのオプションの有無を確認しておくとよいでしょう。
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よくある質問(FAQ)

Q. 計測用の転送番号をGoogleビジネスプロフィールに登録すると、ペナルティを受けますか?
番号を登録しただけで自動的に罰則が科されるわけではありません。ただしガイドラインは「個々のビジネス拠点に直接つながる番号」「ビジネス直属の番号」を求めており、転送先が別事業者の受付センターであれば違反とみなされる可能性があります。
リスクを避けたいのであれば、メイン番号は実番号のままにして、計測番号は追加の電話番号欄に置く構成をおすすめします。
Q. 050で始まるIP電話の番号でも大丈夫ですか?
番号の種類そのものが禁止されているわけではないため、050番号でもガイドライン上は登録できます。ただし市外局番付きの番号に比べて、その地域の店舗であるという情報が伝わりにくい面はあります。
地域密着で集客したい店舗であれば、市外局番付きの固定電話番号をメインに据えるほうが自然です。050番号は追加の番号として使うのが無難でしょう。
Q. フリーダイヤル(0120)をメイン番号にしてもよいですか?
複数店舗で同じフリーダイヤルを共有していると、店舗ごとの区別がつきにくくなるため、ガイドラインが求める「個々のビジネス拠点の番号」から外れます。
店舗ごとに別のフリーダイヤルを用意し、その店舗に直接つながるのであれば問題は小さくなります。それでも、地域性の伝わりやすさという点では市内局番の番号に分があります。
Q. Googleビジネスプロフィールの通話履歴で件数を見ることはできますか?
従来の通話履歴(コール履歴)機能は、2024年7月31日をもって提供が終了しました。記録のエクスポートも2024年8月30日で締め切られており、現在この機能を使って着信を数えることはできません。
現在確認できるのは、パフォーマンス画面に表示される「通話数」(通話ボタンがクリックされた回数)などの指標です。誰からいつかかってきたかという単位での記録は残りません。
なお、同じ時期に終了した従来のチャット機能については、その後テキストメッセージやWhatsAppを使う別の方式が一部の地域で提供されています。通話履歴とは扱いが異なる点にご注意ください。
Q. 番号を変えると、Googleマップの順位はすぐ下がりますか?
番号を変えた翌日に順位が急落するといった単純な因果関係は確認されていません。ローカル検索の結果は、主に関連性・距離・知名度という複数の要素にもとづいて表示されるためです。
ただし情報の一貫性は、Googleがお店を正しく認識するための土台にあたります。土台が揺らげば、ほかの施策の効果も出にくくなると考えておくのが現実的です。
Q. すでに計測番号をメインに登録してしまいました。どうすればよいですか?
慌てて全部を一度に変える必要はありません。まずGoogleビジネスプロフィールのメイン番号を実番号に戻し、計測番号は追加の電話番号欄に移してください。
そのうえで、自社サイトと主要なポータルサイトの表記を実番号に揃えます。掲載場所の一覧を作りながら、一週間ほどかけて順に修正していけば十分です。
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