「地元のお客様に、もっと知ってもらいたい」。そう考えたとき、多くの店舗オーナーがまず手をつけるのは、Googleビジネスプロフィールの更新やSNSの投稿ではないでしょうか。
その順番は間違っていません。ただ、それだけでは埋まらない差が、地域には確かに存在します。
同じような業種、同じような規模なのに、なぜか地元で名前が通っている店があります。
商工会の会報に載り、市の観光サイトに出ていて、地域の情報サイトにも店名がある。そういう店です。
地図やSNSの外側で名前が出ている状態は、地味ですが確実に効いてきます。この記事では、地域メディアや商工会などへの掲載を増やすために、どこに・何を・どう依頼すればよいのかを、順を追って解説します。
地元での「見つかりやすさ」は地図の外側でも作られる

Googleが見ているのは「知名度」という要素
Googleビジネスプロフィールのヘルプ「Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント」では、ローカル検索結果が主に「関連性」「距離」「知名度」の3つに基づいて表示されると説明されています。関連性は検索語句とプロフィールが合致する度合い、距離は検索しているユーザーからの近さです。
問題は3つめの知名度です。ヘルプでは「ビジネスがどれだけ広く知られているか」を指すと書かれており、ビジネスにリンクしているウェブサイトの数やクチコミの数などの情報にも基づくと明記されています。
つまり、プロフィールの中だけを一生懸命磨いても、届かない領域があるということです。店の外、つまりウェブ全体で自分の店がどれだけ話題にされているかが、地図の見え方に関わってきます。
なお、この要素はかつて日本語ヘルプで「視認性の高さ」と表記されていましたが、現在は「知名度」という言葉で説明されています。表現は変わりましたが、外部の情報が評価に関わるという考え方そのものは変わっていません。
店名が語られること自体に意味がある
ウェブ上で店名・住所・電話番号(NAP)が言及されることを、ローカルSEOの世界ではサイテーションと呼びます。被リンクと違い、リンクが張られていなくても「言及されていること」自体を指すのが特徴です。
商工会の会員名簿に店名と住所が載る。市の商店街マップに電話番号つきで掲載される。
こうした一つひとつが、その店が実在し、地域で活動している事実の裏づけになっていきます。積み重なるほど、その店の輪郭がはっきりしていきます。
サイテーションの基本的な考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお読みいただくと、この記事の内容がより具体的に掴めるはずです。
参考記事:サイテーション(言及)を増やしてローカルで強くなる
広告と違って、掲載は積み上がっていく
チラシや広告は、出した月にしか効きません。出稿をやめれば、翌月には何も残らないのが普通です。
一方、地域メディアや団体のサイトに掲載された情報は、削除を依頼しない限りそこに残り続けます。
商工会の会員一覧、観光協会の店舗紹介ページ、地域イベントの協賛社リスト。どれも1年後、3年後にも同じ場所にあります。
この「消えない」という性質が重要です。1件あたりの効果は小さくても、5件、10件と積み上がっていくと、ウェブ上で店の存在を確認できる場所がじわじわ増えていきます。
もう一つの利点は、費用がほとんどかからないことです。会費が必要な団体もありますが、自治体や地域メディアの無料掲載枠、取引先の取扱店一覧などは、手間だけで載せてもらえる場合が少なくありません。
どのくらい効くのかを、正しく見積もっておく
ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。
地域メディアに1件載ったからといって、翌週にGoogleマップの順位が跳ね上がるわけではありません。Googleは検索アルゴリズムの詳細を公開しておらず、どの掲載がどれだけ効いたかを切り分けて証明することもできません。
ですから、「掲載を増やせば必ず上位に出る」という期待の持ち方は避けてください。そう断言する業者がいたら、その時点で距離を置いたほうが安全です。
現実的な捉え方はこうです。
掲載は、順位を直接動かすスイッチではなく、店の土台を厚くする作業だと考えてください。人が見て「ちゃんとした店だ」と判断できる材料が増えれば、結果として検索からの流入も、紹介からの来店も増えやすくなります。
私自身、Webサイト制作とSEOの支援を10年以上続けてきましたが、地域に根ざした事業ほど、この「オンラインの外堀」を埋めた店が最後に強いという実感があります。派手さはありませんが、一度作れば崩れにくい種類の強さです。
掲載を狙える地域メディア・団体を6つに分ける

1.商工会・商工会議所
もっとも定番で、もっとも見落とされがちなのがここです。
商工会議所は商工会議所法を根拠法とし、市の区域を単位に設立されています(東京都の特別区は、23区全体で一つの区域です)。一方の商工会は商工会法を根拠法とし、町村の区域を単位に設立されています。
自分の店がどちらの区域にあるかは、住所で決まります。「商工会議所と商工会のどちらに入るべきか」で悩む必要は、基本的にありません。
掲載の機会としては、会員名簿や会員検索ページ、会報・広報誌の会員紹介コーナー、ホームページの新規会員紹介などがあります。加入しても名簿に載るだけで終わっている店が非常に多いので、ここは差がつきやすいポイントです。
会費は地域や事業規模によって異なります。金額と掲載枠の内容は、地元の窓口に直接確認するのが確実です。
2.自治体・観光協会の公式サイト
市区町村の公式サイトには、意外なほど店舗が載る場所があります。産業振興課や商工観光課が運営する事業者一覧、創業支援の事例紹介、商店街マップ、特産品の取扱店リストなどです。
観光協会のサイトも有力です。飲食店・宿泊施設はもちろん、土産物を扱う小売店、体験を提供するサロンや教室なども対象になることがあります。
この種の掲載は、公的な機関のドメインに店名が載るという点で価値があります。
しかも多くの場合、掲載は無料です。探し方は単純で、「(市区町村名) 店舗一覧」「(市区町村名) 商工 事業者紹介」などで検索し、自分と似た業種の店が載っているページを見つけたら、そのページの運営部署に問い合わせるだけです。
3.地域情報サイト・地域ポータル
地域名を冠した情報サイトや、地元の子育て情報サイト、タウン誌のウェブ版などです。運営者が個人や小さな会社であることも多く、掲載のハードルは比較的低めです。
ポイントは、閲覧数の多寡だけで判断しないことです。訪問者が少ないサイトでも、店名と住所が正しく載っていれば、サイテーションとしての役割は果たします。
ただし、実体のない自動生成サイトや、どの地域の店でも無差別に掲載しているだけの低品質なディレクトリは避けてください。ここは数を追うと逆効果になりやすい領域です。
判断基準はシンプルで、「そのサイトを地元の人が実際に読んでいそうか」を見てください。運営者の顔が見え、更新が続いているサイトなら、まず問題ありません。
4.地方紙・フリーペーパー・ケーブルテレビ
地方紙の地域面、地域限定のフリーペーパー、ケーブルテレビの情報番組。いずれも「地域のネタ」を常に探している媒体です。
紙やテレビの露出は、それ自体が信頼につながります。加えて、多くの媒体がウェブ版を持っており、記事がウェブに残れば、そこでも店名が言及されることになります。
ここは広告出稿ではなく、取材につながるネタを持ち込む形が基本です。何がネタになるかは、後半で具体的に扱います。
5.業界団体・組合・取引先
見落とされやすいのがこの分類です。業界団体や協同組合の会員一覧、加盟店検索ページには、たいてい店名・住所・電話番号が並んでいます。
さらに効果的なのが、仕入先やメーカーの「取扱店一覧」「正規販売店検索」です。美容室であれば使用しているヘアケアブランド、工務店であれば建材メーカー、飲食店であれば地酒の蔵元などが該当します。
これらは、すでに取引があるのに掲載申請をしていないだけというケースが本当に多い場所です。次の仕入れの連絡のついでに、「取扱店ページに載せてもらえませんか」と一言添えるだけで済むことがあります。
6.地域イベント・学校・スポンサー枠
地域のお祭り、マラソン大会、少年スポーツチーム、学校の行事。こうした催しには、たいてい協賛企業を紹介するページやパンフレットがあります。
協賛金額は数千円から数万円という規模のことが多く、広告費として考えれば決して高くありません。加えて、地域での顔つなぎという副産物もついてきます。
清掃活動や防災訓練への参加、職場体験の受け入れなども、自治体や学校のサイトで紹介されることがあります。営業活動として狙うというより、続けていれば自然に露出が増える種類のものです。
依頼する前に整えておきたい3点セット

その1|店名・住所・電話番号を1つに決める
掲載依頼を始める前に、必ずやっておくべき作業があります。店名・住所・電話番号の正式な表記を、1つに固めておくことです。
ここが揺れていると、せっかく掲載を増やしても効果が薄れます。
「1-2-3」と「1丁目2番3号」、「株式会社」と「(株)」、固定電話と携帯電話。こうした差が媒体ごとに混ざると、同じ店の情報だと認識されにくくなるからです。
基準にすべきは、Googleビジネスプロフィールに登録している表記です。
プロフィールの表記をそのままコピーして貼り付けられる状態にしておけば、依頼のたびに迷うことがなくなります。表記統一の考え方は、こちらの記事で詳しく整理しています。
その2|200字と400字の紹介文を用意する
掲載を依頼すると、ほぼ必ず「お店の紹介文をください」と言われます。そのたびに一から書いていると、内容も長さもばらついてしまいます。
あらかじめ2種類を作っておくのが効率的です。
短い枠用に200字程度、少し詳しい紹介用に400字程度。この2つがあれば、たいていの依頼に即答できます。
書く内容は、業種、提供しているもの、対応エリア、創業年や実績、そして誰に向いている店なのか。宣伝文句を並べるより、事実を淡々と書いたほうが、媒体側もそのまま使いやすくなります。
この紹介文は、Googleビジネスプロフィールの「説明」欄と方向性を揃えておくと、なおよいです。あちこちで同じ人格の店として見えるほうが、読む側も迷いません。
その3|使い回せる写真を5枚そろえる
掲載依頼で意外と足を引っ張るのが写真です。「写真を1枚ください」と言われてから慌てて撮ると、時間もかかり、質も安定しません。
最低限そろえたいのは5枚です。
外観、内観、主力商品やサービス、スタッフ、そして店のロゴ。これだけあれば、ほとんどの媒体の要望をカバーできます。
横長と縦長の両方を持っておくと、さらに安心です。媒体ごとに使える比率が違うため、片方しかないと「使えないので別の写真を」と往復が発生します。
保存場所も決めておいてください。クラウドの共有フォルダに入れてリンクを渡せるようにしておくと、メールの添付容量で困ることもなくなります。
連絡の仕方と、断られたときの考え方
連絡手段は、相手のサイトにある問い合わせフォームで構いません。電話が向く相手もありますが、文字で残るほうが情報の行き違いが起きにくいという利点があります。
本文は短くて大丈夫です。
誰なのか、どのページを見て連絡したのか、何をお願いしたいのか。この3点が最初の5行に入っていれば、要件は伝わります。
そして前提として、断られることは普通にあります。
掲載基準に合わない、枠が埋まっている、今期は募集していない。どれも店の価値とは関係のない事情です。
10件に声をかけて3件載れば十分だと考えて、淡々と次に進んでください。断られた相手も、半年後には状況が変わっていることがあります。
載りやすいネタの作り方と、依頼の実務

「お知らせ」ではなく「地域の話題」にする
媒体に断られる依頼には、共通する特徴があります。内容が「うちの店の宣伝」で終わっていることです。
媒体が欲しいのは、その地域の読者が読みたくなる話です。新メニューを出したという事実そのものではなく、地元の農家と組んだ、この土地の食材を使った、といった地域とのつながりが必要になります。
言い換えると、主語を「うちの店」から「この地域」に置き換えられるかどうかが分かれ目です。同じ出来事でも、伝え方ひとつで扱いが変わります。
取材・掲載につながりやすい5つのネタ
1つめは周年です。創業10年、20年といった節目は、地域で続いてきたことの証明として扱いやすい題材になります。
2つめは地域との協業です。地元農家、近隣店舗、学校との連携は、地域メディアがもっとも好むネタのひとつです。
3つめは人です。若手が継いだ、職人が長年勤めている、といった人の物語は、商品説明よりはるかに記事になりやすい素材です。
4つめは季節の企画、5つめは社会性のある取り組みです。食品ロス対策、バリアフリー対応、災害時の協力など、公共性のある話題は自治体の広報にも拾われることがあります。
相手に文章を書かせない
掲載してもらいやすくする、いちばん確実な方法があります。相手の仕事を減らすことです。
「取材してください」と投げるのではなく、そのまま使える原稿と写真を先に渡してください。
日時、場所、誰が、何を、なぜ。この5点が埋まった400字程度の文章と、写真2〜3枚があれば十分です。
媒体側は限られた人数で運営しています。編集の手間がかからない素材ほど、実際に採用される確率は上がります。
ただし、渡した文章がそのまま載る前提で、事実確認は自分で済ませておいてください。数字や日付の誤りがそのまま公開されると、訂正の手間は自分に返ってきます。
進める順番と、無理のない頻度
一度に全部やろうとすると、まず続きません。順番を決めて、少しずつ進めるのが現実的です。
最初に手をつけるべきは、すでに関係がある相手です。
加入済みの団体、取引先、以前取材を受けた媒体。ここは連絡するだけで掲載が決まることがあり、成功体験としても効きます。
次が自治体や観光協会などの公的な枠、その次が新規の地域メディアです。難易度の低い順に進めるほうが、結果として総数は増えます。
頻度は、月に1〜2件で十分です。
年間で12件から24件の掲載が積み上がれば、地域での見え方は確実に変わります。自社サイトに地域の記事を書く取り組みと組み合わせると、さらに相乗効果が出やすくなります。
参考記事:地域ネタの記事はMEOに効くのか
掲載された後にやること・効果の確かめ方

公開されたら、まず表記を確認する
掲載が決まったら、公開されたページを必ず自分の目で確認してください。ここを省く店が非常に多いのですが、誤りはかなりの頻度で起きます。
見るべきは4点です。
店名の表記、住所の書き方、電話番号の桁、そして営業時間や定休日。特に住所と電話番号は、1文字違うだけで別の店として扱われかねません。
誤りを見つけたら、早めに訂正を依頼します。間違った情報が残るくらいなら、掲載されないほうがましな場合すらあります。
あわせて、掲載先と掲載日を一覧にして記録しておいてください。移転や電話番号の変更があったとき、どこに連絡すればよいかが一目で分かります。
リンクの有無で一喜一憂しない
掲載ページに自社サイトへのリンクが張られていないことがあります。店名と住所だけ、という形です。
これは残念がる必要はありません。
前述のとおり、サイテーションはリンクがなくても成立します。店名と住所が正しく載っているなら、役割は果たしています。
もちろんリンクがあるに越したことはないので、依頼の段階で「サイトのURLも載せていただけますか」と添えておくとよいでしょう。断られたら、それはそれで構いません。
効果は3つの数字で見る
掲載の効果は、単独では測れません。それでも、方向が合っているかどうかは3つの数字で確認できます。
1つめは指名検索の量です。店名で検索される回数が増えていれば、店を知っている人が増えている証拠になります。
2つめはGoogleビジネスプロフィールのパフォーマンスです。表示回数、ウェブサイトのクリック数、通話数の推移を、月単位で並べて見てください。
3つめは地図上での見え方です。
地図の順位は検索する場所によって変わるため、1地点だけを見ていても実態はつかめません。エリアごとの差まで確認すると、変化がはっきりします。
参考記事:指名検索を増やしてローカルでも強くなる/同じ店でもエリアで順位が違う|地図の順位は「面」で見る
やってはいけない3つのこと
1つめは、順位目的でリンクを買うことです。「掲載+リンクで月◯万円」といった営業は、ローカルに限らずリスクが高く、おすすめできません。
2つめは、実体のないディレクトリへの大量登録です。
地域とも業種とも関係のないサイトに機械的に登録しても、地元の人の目には触れません。表記ゆれだけが増える結果になりがちです。
3つめは、事実と違う情報を載せることです。
営業していない住所、実績の誇張、受賞していない賞の記載。いずれも信頼を損ないます。
また、店側が表示内容の決定に関与した記事は、対価の有無にかかわらず、広告だと読者に分かる表示が必要になる場合があります(景品表示法のいわゆるステルスマーケティング規制)。判断に迷う場合は自己判断せず、消費者庁の資料を確認するか専門家にご相談ください。
よくある質問

商工会と商工会議所、どちらに入ればよいですか
基本的には、店の所在地で決まります。商工会議所は市の区域、商工会は町村の区域を単位に設立されているためです。
自分がどちらの区域かは、地元の窓口に住所を伝えればすぐ分かります。会費や掲載枠の内容も、その際に確認しておくとよいでしょう。
掲載してもらうのにお金はかかりますか
媒体によります。自治体や観光協会の事業者一覧、取引先の取扱店ページなどは無料のことが多く、団体への加入は会費が必要です。
まずは無料で載せてもらえる枠から着手し、費用がかかるものは効果と手間を見てから判断するのが安全です。最初から高額な有料枠に申し込む必要はありません。
掲載されればGoogleマップの順位は上がりますか
上がると断言することはできません。Googleはローカル検索を関連性・距離・知名度で判断すると説明していますが、個々の掲載がどれだけ寄与したかを切り分けることはできないためです。
掲載は順位のスイッチではなく、店の土台を厚くする取り組みだと捉えてください。順位だけを見ると効果を見誤ります。
店名だけの掲載でも意味はありますか
あります。リンクがなくても、店名・住所・電話番号が言及されること自体に意味があるためです。
ただし条件があり、表記が正しいことが前提です。住所や電話番号が違っていると、かえって情報がばらつく原因になります。
何件くらい掲載されれば十分ですか
明確な正解はありませんが、同じ商圏の競合がどこに載っているかが一つの目安になります。競合の店名で検索し、出てきた掲載先を一覧にしてみてください。
その中で自分の店が載っていない場所が、まず埋めるべき候補です。件数を追うより、地元の人が実際に見る場所を押さえるほうが効果的です。
地元での見つかりやすさにお悩みの方へ
地域メディアや商工会への掲載は、一度動き出せば難しい作業ではありません。ただ、どこから手をつけるか、自分の商圏では何が効くのかは、店の立地や業種によって変わります。
「掲載を増やしているが、地図での見え方が変わっているのか分からない」「競合と比べて何が足りないのかを知りたい」。そうした場合は、現状を数字で把握するところから始めるのが近道です。
access-meoでは、店舗周辺をエリアごとに区切って、Googleマップでの見え方を可視化できます。
まずは無料でご自身の店の状態を確認してみてください。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
