「口コミの返信をお願いしていたスタッフが辞めてしまい、Googleビジネスプロフィールを誰も触れなくなった」。「MEO業者との契約を切ったら、店舗情報を修正できなくなった」。
店舗運営の現場では、こうした相談が驚くほど多く寄せられます。原因はほとんどの場合、担当者の退職や業者の変更というタイミングで、権限の引き継ぎをしないまま関係が終わってしまったことにあります。
Googleビジネスプロフィールは、店名で検索されたときに真っ先に表示される、店舗にとって最も目立つ看板です。その看板を編集できる人がいなくなるというのは、店の入口の鍵を失くしたのと同じ状態だと考えてください。
この記事では、担当者の退職や業者変更というイベントに備えて、Googleビジネスプロフィールの権限を安全に引き継ぐ手順を、順を追って解説します。すでに権限を失ってしまった場合の取り戻し方も後半でまとめました。
引き継ぎを後回しにした店舗が失うもの

退職と同時にプロフィールが「他人のもの」になる
よくあるのは、当時いちばんパソコンに詳しかったスタッフが、自分の個人的なGoogleアカウントでビジネスプロフィールを開設したというケースです。開設した本人がそのままオーナーとして残り、店側は誰もアカウント情報を把握していません。
その状態でスタッフが退職すると、店の情報を編集する権利が、店を離れた個人の手元に残ったままになります。営業時間を変えたい、写真を入れ替えたい、口コミに返信したい、そのすべてができません。
しかも退職後は連絡が取りづらくなることが多く、円満に辞めた相手であっても「もうそのアカウントのパスワードを覚えていない」と言われて詰んでしまう例もあります。放置している時間が長いほど、解決の難易度は上がっていきます。
業者変更のときに起きやすい三つのトラブル
MEO業者や制作会社を変える場面では、もう少し複雑なトラブルが起きます。ひとつ目は、業者が自社のアカウントでプロフィールを新規作成しており、店側にはオーナー権限がまったく渡っていないパターンです。
ふたつ目は、契約終了と同時に業者がプロフィールから離脱し、誰もオーナーがいない宙ぶらりんの状態になるパターン。三つ目は、業者側が別のプロフィールを重複して作ってしまい、口コミの付いた本来のプロフィールとは別の情報が地図に出てしまうパターンです。
いずれも、契約前に権限の所在を確認していれば防げたものばかりです。重複が起きてしまった場合の対処は、重複したビジネスプロフィールの見つけ方と統合手順で詳しく解説しています。
そもそもの業者選びの段階で、権限の扱いを明確にしてくれる会社かどうかを見るのも大切です。判断基準はMEO業者の選び方と「ダメな業者」の見分け方にまとめました。
アカウントごと渡す・もらうが危険な理由
引き継ぎというと、Gmailのアドレスとパスワードを新しい担当者に伝えれば済むと考えてしまいがちです。しかしこれは、絶対に避けたい方法です。
Googleアカウントには、そのプロフィール以外にもメール、カレンダー、写真、広告アカウントなど個人の情報が紐づいています。パスワードを共有した瞬間、必要のない情報まで見られる状態になるため、情報管理の観点で大きなリスクを抱えることになります。
Googleビジネスプロフィールヘルプでも、各ユーザーが自分のGoogleアカウントを持っていれば、パスワードを共有することなくプロフィールを管理できると明記されています。正しいやり方は「アカウントを渡す」ではなく「権限を渡す」です。
引き継ぎ前に押さえる三つの役割の違い

オーナーと管理者でできることの差
Googleビジネスプロフィールのユーザーには、オーナーと管理者という二つの役割があります。日々の投稿、写真の追加、口コミへの返信、営業時間の編集といった作業は、どちらの役割でも行えます。
違いが出るのは、ユーザーの追加と削除、そしてプロフィールそのものの削除です。この二つはオーナーだけができ、管理者にはできません。
管理者は自分自身をプロフィールから外すことはできますが、他人を追加したり削除したりはできません。つまり、外部の業者やアルバイトに日常運用を任せたいだけなら、管理者で十分だということになります。
役割ごとの権限の一覧は、オーナー・管理者権限の違いと安全な付与方法でも整理しています。付与の考え方から確認したい方はあわせてご覧ください。
メインのオーナーは必ず一人だけ
オーナーは複数人を設定できますが、そのうちメインのオーナーとして設定できるのは一人だけです。引き継ぎで本当に重要なのは、この「メインのオーナー」が誰になっているかという点です。
メインのオーナー権限を譲渡できるのは、現在のメインのオーナー本人だけと定められています。また、メインのオーナーは、他の誰かに権限を譲渡するまで、自分自身をプロフィールから削除することができません。
ここを理解しておかないと、「前任者を削除しようとしたのにボタンが押せない」といった場面で手が止まってしまいます。削除より先に、メインのオーナーの付け替えを済ませるのが正しい順番です。
追加された直後は七日間の制限がある
意外と知られていないのが、新しくオーナーまたは管理者になったユーザーには、一部の操作について七日間の待機期間が設けられているという仕様です。Googleビジネスプロフィールヘルプに明記されています。
この七日間のあいだは、プロフィールの削除や削除の取り消し、他のオーナー・管理者の削除、そしてメインのオーナー権限の譲渡を行おうとするとエラーが表示されます。既存のオーナーが、オーナーになってから七日以内に他のユーザーをメインのオーナーにしようとした場合も同じくエラーになります。
つまり、退職日の当日に慌てて追加しても、その日のうちに引き継ぎを完了させることはできません。退職や契約終了の一〜二週間前には新担当者を追加しておくのが現実的なスケジュールです。
もうひとつ注意したいのが、新たにオーナーまたは管理者になってから七日以内に自分でプロフィールを離れると、そのままユーザーから外れてしまうという点です。気が変わった場合は、あらためて追加してもらう必要があります。
退職・業者変更のときの引き継ぎ手順

交代が決まったら最初に確認する三つのこと
退職や契約終了が決まったら、作業に取りかかる前に現状を把握します。確認するのは、いま誰がユーザーとして登録されているか、その中でメインのオーナーは誰か、そして自社名義のGoogleアカウントが用意できているかの三点です。
ユーザーの一覧は、business.google.comにログインし、その他アイコンからビジネスプロフィールの設定を開き、ユーザーとアクセス権を選ぶと確認できます。ここに表示される名前とメールアドレスを、スクリーンショットで残しておくと後の作業が楽になります。
自社名義のアカウントというのは、たとえば info@ で始まる会社の代表メールアドレスで作ったGoogleアカウントのことです。個人名のアカウントをメインのオーナーにしないという原則を、この段階で決めておいてください。
新しい担当者をユーザーとして追加する
次に、引き継ぎ先となる人を招待します。手順は、ビジネスプロフィールの設定からユーザーとアクセス権を開き、左上の追加アイコンを選び、招待したい人のメールアドレスを入力するという流れです。
アクセス権の欄でオーナーか管理者を選び、招待を押すと相手に招待メールが届きます。相手が招待を承諾すると、その時点からプロフィールにアクセスできるようになり、招待した側にも通知のメールが届きます。
まだ承諾されていない招待は、ユーザーとアクセス権のページで保留中として表示されます。相手がメールに気づいていないことも多いので、招待したら口頭やチャットでも一声かけておくと確実です。
ここでの役割の選び方はシンプルです。自社の担当者はオーナー、外部の業者は管理者にしておくと、契約が終わったときに自社側だけで整理できます。
メインのオーナー権限を譲渡する
新しい担当者が招待を承諾し、七日間の待機期間が明けたら、メインのオーナー権限を移します。この操作は現在のメインのオーナーが行う必要があるため、前任者がまだ協力できるうちに済ませるのが鉄則です。
手順は、ビジネスプロフィールの設定からユーザーとアクセス権を開き、権限を渡したいユーザーを選び、アクセスの横にある編集アイコンからメインのオーナーを選んで保存する、という流れになります。
Googleのヘルプでは、事業のオーナー権限を譲渡する場合には必ずメインのオーナー権限を新しいオーナーに譲渡するよう案内されています。こうすることで、口コミをはじめとする情報がそのまま維持されるためです。
逆に言えば、権限を移さずに新しくプロフィールを作り直すと、これまで積み上げた口コミや写真、評価がすべて引き継がれません。作り直しは最後の手段であり、原則は譲渡だと覚えておいてください。
前任者・前業者を削除するタイミング
メインのオーナーの付け替えが完了したら、最後に不要になったユーザーを削除します。ユーザーとアクセス権のページで対象者を選び、ユーザーを削除を押すだけです。
削除できるのはオーナーだけで、削除された相手にはメールで通知が届きます。なお、その人が過去に書いた口コミへの返信や投稿は、削除後もプロフィールに残り続けます。
削除の順番を間違えないことが大切です。先に前任者を削除してしまうと、メインのオーナーが不在になったり、そもそもメインのオーナーは自分を削除できないという制限に引っかかったりします。
正しい順番は、新担当者を追加する、七日待つ、メインのオーナーを移す、前任者を削除する、の四段階です。この順番を紙に書いて手元に置いておくだけでも、事故はかなり減らせます。
すでに権限を失っている場合の取り戻し方

まず自分のプロフィールの状態を確認する
すでに誰も触れなくなっている場合は、Google検索やGoogleマップで自店を検索し、画面に「ビジネスオーナーですか?」または「このビジネスのオーナーですか?」というボタンが出ているかを見ます。
Googleのヘルプによると、このボタンが表示されない場合は、すでにあなたがオーナーになっている可能性があります。ログインしているアカウントを切り替えて、心当たりのあるアカウントで順番に確認してみてください。
プロフィールが完全に他人の管理下にあると分かったら、次に説明するオーナー権限のリクエストに進みます。なお、プロフィールが表示されなくなっている、停止されているといった別の症状の場合は、急にGoogleマップから消えた?原因と対処もあわせて確認してください。
オーナー権限をリクエストする手順
実店舗を構えているビジネスの場合、business.google.com/add にアクセスし、店名と住所を入力してリストから自店を選びます。すると「このビジネスプロフィールは他のユーザーが管理している可能性があります」というメッセージが表示されます。
そこでアクセス権限をリクエストを選び、表示されたフォームに必要事項を記入して送信します。送信すると自分あてに確認メールが届き、同時に現在のオーナーにも通知が送られます。
店舗を持たない出張・訪問型のビジネスについては、Googleはこの手順ではなくお問い合わせ窓口を案内しています。お問い合わせフォームで、リスティングのオーナー権限を譲渡するという内容を選んで依頼する形になります。
返答がないとき・拒否されたときの対応
リクエストを受け取った現在のオーナーは、三日以内に返信する必要があるとGoogleのヘルプに記載されています。承認されればそのままプロフィールを管理できるようになり、承認のメールが届きます。
三日が経っても返信がない場合は、こちらがそのプロフィールのオーナー申請をできることがあります。確認メールを開いてリクエストを表示を選び、確認に進み、画面の指示に沿ってオーナー確認の手続きを行う流れです。
ここで注意したいのは、申請は常にできるわけではないとGoogleが明記している点です。必ず取り戻せると約束されているわけではないため、期待しすぎず、並行して別の手も考えておく必要があります。
拒否された場合は、拒否のメールが届きます。それでもプロフィールの編集を提案することはできますし、決定に対して再審査を請求することも可能です。営業許可証や公共料金の請求書など、事業の実在を示す資料は、あらかじめ手元にそろえておくとスムーズです。
なお、ネット上の解説記事では返答期限を七日とするものも見かけますが、これは新しく追加されたオーナー・管理者に課される七日間の制限と混同されている可能性があります。手続きを進める際は、必ずGoogleビジネスプロフィールヘルプの最新の記載をご確認ください。
二度と困らないための権限の棚卸しルール

メインのオーナーは必ず会社名義にする
再発防止でいちばん効くのは、メインのオーナーを個人ではなく会社・店舗の名義にしておくことです。代表者のアドレスでも構いませんが、退職や代替わりを考えると info@ などの共有アドレスのほうが安全です。
そのうえで、現場のスタッフや外部の業者にはオーナーまたは管理者を付与します。日常業務は問題なく回りますし、いざというときは会社名義のアカウントから整理できます。
共有アドレスのGoogleアカウントは、二段階認証の設定と復旧用の連絡先も忘れずに整えておいてください。担当者が辞めても、会社としてログインできる状態を保つことが目的です。
半年に一度のユーザー一覧チェック
ユーザーとアクセス権のページを開いて一覧を眺めるだけの作業ですが、これを半年に一度でも習慣にすると、思わぬ発見があります。すでに辞めた人が残っていた、契約が終わった業者がまだ管理者だった、といったケースは珍しくありません。
チェックする項目は、見覚えのないアカウントが混ざっていないか、退職者や契約終了先が残っていないか、メインのオーナーが会社名義になっているかの三つで十分です。
この棚卸しは、店舗数が多いほど効果が大きくなります。店舗ごとに担当者と権限が食い違っている状態は、多店舗展開でよく起きる問題です。
引き継ぎ台帳に書いておきたい項目
紙でもスプレッドシートでも構わないので、店舗のデジタル資産をまとめた一覧を作っておくことを強くおすすめします。Googleビジネスプロフィールだけでなく、ホームページ、SNS、予約システムまで含めた台帳です。
記載する項目は、サービス名、管理に使っているアカウント、メインのオーナーまたは管理者は誰か、契約先の会社名と担当者、そして最終確認日の五つが基本になります。
パスワードそのものは台帳に書かず、パスワード管理ツールなど別の安全な場所で管理してください。台帳の目的は、鍵の在りかを組織として把握しておくことにあります。
内製と外注のどちらで運用するかによって、台帳に書くべき相手も変わります。体制づくりの考え方はMEOは自分でできる?内製と外注の判断基準で整理しました。
順位の変化から異変に気づく
権限のトラブルは、多くの場合すぐには気づけません。営業時間を変えようとした日や、口コミに返信しようとした日になって初めて発覚します。
そこで役立つのが、Googleマップでの表示順位を定期的に記録しておくという習慣です。担当者が代わった前後で順位や表示エリアが動いていれば、運用が止まっているサインとして早めに気づけます。
当社が開発・運営しているaccess-meoは、店舗の周辺を格子状に区切ってエリアごとの順位を色分けで表示するツールです。無料でも一度お試しいただけますので、引き継ぎの前後で状態を記録しておく用途にもお使いいただけます。
よくある質問

前の担当者と連絡が取れません。どうすればよいですか
連絡が取れない場合は、この記事の後半で説明したオーナー権限のリクエストを試すことになります。business.google.com/add から自店を選び、アクセス権限をリクエストする流れです。
三日を過ぎても返信がない場合はオーナー申請ができることがありますが、常に申請できるとは限りません。事業の実在を示す書類を準備したうえで、時間に余裕を持って進めてください。
プロフィールを作り直したほうが早くないですか
おすすめできません。新しく作ると、これまでに集まった口コミや評価、写真がすべて引き継がれず、ゼロからのスタートになります。
さらに、同じ店舗のプロフィールが二つ存在する状態になり、重複によって表示が不安定になるおそれもあります。手間はかかっても、既存のプロフィールを取り戻す方向で進めるのが基本です。
外部の業者に渡すのはオーナーと管理者のどちらですか
日常の運用を任せるだけであれば管理者で足ります。管理者は投稿、写真、口コミ返信、営業時間の編集などができる一方で、ユーザーの追加や削除、プロフィールの削除はできません。
業者からオーナー権限を求められた場合は、その必要性を確認してみてください。契約終了時の返還方法まで書面で取り決めておくと、後々のトラブルを避けられます。
前任者を削除したら口コミへの返信は消えますか
消えません。Googleのヘルプによると、ユーザーを削除しても、そのユーザーが過去に行った口コミへの返信、投稿、コメントはビジネスプロフィールに残ります。
ただし、削除された相手にはメールで通知が届きます。関係性によっては、削除の前に一声かけておいたほうが穏便に進むこともあります。
引き継ぎのために契約書で決めておくことはありますか
メインのオーナーを自社名義とすること、業者には管理者権限を付与すること、契約終了時に業者は速やかにユーザーから離脱することの三点を書き添えておくと安心です。
契約書の文面や法的な効力については、弁護士など専門家にご相談ください。ここで紹介しているのは、あくまで運用上の考え方です。
MEO・ローカル集客のご相談はお気軽に
権限の引き継ぎは、一度きちんと整えてしまえば、その後は半年に一度の確認で済む作業です。ただ、すでにこじれてしまっている場合や、多店舗で状況が把握しきれていない場合は、外から一度整理したほうが早いこともあります。
株式会社アクセス・リンクでは、Googleビジネスプロフィールの整備からMEOの継続運用、ホームページ制作までを一貫してお手伝いしています。まずは現状を見てほしいというご相談だけでも歓迎です。
お問い合わせはこちらのフォームから承っています。自店の現在地を数字で見てから相談したい方は、access-meoの無料チェックを先にお試しください。
